最高裁判所第二小法廷 昭和24(れ)1952 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人寺坂銀之輔、同武井正雄の上告趣意第一点について。(一)かりに被告人
が事実上便宜の取計をしなかつたとしても、便宜の取計をすると否とにかかわらず、
職務に関し金員の贈与を受けたとすれば収賄罪を構成するものである。原判決が「
Aから貨車の割当について便宜の取計をしてくれた報酬として供与されるものであ
ることを知りながら」と判示したのは、被告人に現実に便宜の取計をする意思があ
つたとか又は被告人が便宜の取計をしたとかいう趣旨ではなく、被告人はA及びB
等が貨車の割当について便宜の取計を受けた報酬としてAが供与するものであると
の情を知つていた事実を判示したものである。そして右判示事実はその挙示の証拠
で十分に認められるのである。(二)原判決の法令適用の部に「被告人の本件犯行
は全く受身の立場で犯されたものであり実際上に於ては職務遂行に何等の不正の行
われたものでない云々」とあるのは、刑の執行を猶予するのを相当とする情状を説
示しているに過ぎないものであつて、この説示と前段説明した判示事実とは毫も矛
盾し又は齟齬するものではない。
(三)及び(四)しかし被告人が干円の贈与を受けたものであることは、原判決
挙示の証拠中被告人に対する検察事務官の聴取書第一、第二回を通じ被告人の供述
記載と、第一審第四回公判調書中証人Aの供述記載とによつて之を認めることがで
きる。そして右検察事務官に対する被告人の供述記載は所論のような被告人に不利
益な唯一の証拠ではなく、Aの判示に照応する前記供述記載によつて補強されてい
ること明である。以上説明したところにより論旨は何れも理由がない。
同第二点について。
論旨は「被告人は具体的の配車について職務上の権限がなかつたものであると主
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張するのである。なる程個々の配車についてはその部下である配車司令に或程度任
されているとしても、貨物係長は原判文説示のように配車司令の為す職務の遂行を
監督指揮する地位にある以上、職務に関するものと言わなければならない。そして
被告人がかかる権限を有していたことは証人Cの第一審及び原審を通じその供述記
載によつて之を認めることができるから論旨はその理由なきものである。次に論旨
後段の被告人が千円の贈与を受けたものでないという主張は論旨第一点において既
に説明したところにより理由なきものである。
よつて刑訴施行法第二条、旧刑訴法第四四六条により主文の通り判決する。
右は裁判官全員の一致した意見である。
検察官 橋本乾三関与
昭和二四年一二月三日
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 霜 山 精 一
裁判官 栗 山 茂
裁判官 小 谷 勝 重
裁判官 藤 田 八 郎
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